#109 最適な解よりも満足できる解
世の中の市場には、「高すぎる価格」や「低すぎる価格」を調整させる圧力が働く。
この圧力は「神の見えざる手」がかける。
主体的に最適解を求めるための技術である論理思考が猛威を振るう時代において、成り行きに決めてもらおうとすることが、思考の放棄である。
しかし
全ての最適解を自分で導出できると考えることは知的俯慢といえる。
アダム・スミスは、このような知的態度を持つ人たちを「秩序体系」を奉じる人間と名付けている。
秩序体系を奉じる人間は、自分自身がとても懸命であると自惚れることが多く、統治に関する独自の理想的な計画が持っている想像上の美しさにごくわずかな逸脱にも我慢できない。
最大の利益とか、それと矛盾しかねない最大の偏見については全く考慮しない。
理想的な計画を、完全にしかもこと細やかに規定し続ける。
まるで競技者がチェス盤の上で様々な駒を配列するかのように。
しかし
人間社会という大きなチェス盤では、駒自身は動き方の原則どおりに動いてくれない。
物事の関連性が複雑になり、変化のダイナミクスが強まっている現在の社会では、トップダウン思考によって最適な解に到達することができると考えるのは知的俯慢を通り越して滑稽である。
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