#288 共同体化の尺度 ①年功人事について
機能組織の共同体化の恐ろしさは、組織内部では発見し難いところもある。
なぜなら
倫理が頽廃すれば本来の目的欲求が放棄されてしまうため、構成員の評価尺度も狂ってしまうからである。
しかし、それを外形的に捉える尺度が3つある。
今回はその中の1つ、「年功人事」について話す。
①年功人事
これは内部競争の排除である。
その象徴は能力主義の否定と年功人事の確率と見て間違いがない。
組織の構成員が幸せであるためには、構成員相互の競争はしないほうが望ましいこと。
従って
組織の共同体化が進むと、組織の中から構成員の個人的競争を排除する動きが必ず起こる。
その象徴は、人事において抜擢を行わず、能力差をつけないこと。
共同体化した組織では、業績評価や勤務評定を拒否する動きが生じるのが常である。
では何によって地位や役職を決めれば良いか??
それは客観的に分かりやすく本人の努力で変え難い事実を基準にすれば、競争の必要がなくなる。
最もふさわしいのは、年齢または参加順位(入社年次)である。
これだけは誰が見ても明確な上、本人の努力で変わることがないものである。
従って
共同体化した組織では、必ず年功序列人事による人事を行なっている。
旧日本陸海軍でも、昭和に入ることでこの制度が極度に徹底していた。
昭和の建軍の時は全くの白紙の状態から組織を作ったため、完全な機能組織が出来上がったのである。
ところが、やがて陸軍幼年学校や士官学校、海軍兵学校などの軍人養成専門教育期間
が設立され、内部でしか知識と経験と教育成果を発揮することができない職業軍人集団が発生すると、たちまち共同体化してしまったのである。
実は
年功序列人事だけでは組織内での個人競争は完全に排除できないのである!
なぜなら
何十人もいる同期生の中で誰を最高の地位にまで出世させるかという問題が残るから。
年功人事も、組織が拡大発展している時期には、さほど深刻な弊害を生まない。
しかし、組織の規模が一定のままだと様々な問題を生み出すのである。
この場合、まず人事が停滞する。
同期入社者の中から、必ず1人はトップに就けなくてはならないため、1年交替の短期交替となり、抜本的な改革や大事業の推進がおろそかになる。
それでも時には交替時期を延ばさなければならないことも起こるので、徐々に人事は停滞して、同じポストに就く年齢が上昇するのだ。
また、組織全体が常に人事圧力を受け、組織の拡大とポストの増加に熱中することになる。
共同体化した年功人事組織は、組織の拡大だけを目的にして機能の強化を無視することになり易い。