#069 人間が作り出したシステムによって人間が振り回される
〜資本主義社会の4つの疎外〜
①労働生産物からの疎外
資本主義社会における賃金労働によって労働者が生み出した商品は、全て資本家のものになる。
労働者自らの労働によって生み出した商品であるにもかかわらず、自分のものではない。
さらにそれが世に出されることによって、自らの生活が影響を受ける。
②労働からの疎外
マルクスによれば、労働中の労働者は、苦痛や退屈さを覚え、自由が抑圧された状態になる。
本来、「労働というのは人間にとって創造的な活動であるべき」と考え、これが賃金労働性によって歪められていると指摘したのである。
人間は労働をしている間、自己を感じることができず、労役から解き放たれて初めて独立した自分となることができる。
③類的疎外
人間は類的存在、つまりある種類に属しており、そこで健全な人間関係を形成する生き物である。
しかし
分業や賃金労働によって健全な人間関係は破壊されてしまう。
労働者は資本家が所有する会社や社会の「機械的な部品=歯車」となってしまう。
④人間(他人)からの疎外
資本主義社会において、労働者である人間の価値は、
社会や会社の歯車としてどれだけ有効に働くか
つまり生産性だけが問われる。
すると
人間の興味は、どれだけ労働で手っ取り早く稼ぐかということになってしまう。
人間らしい「労働の喜び」や「贈与の喜び」は失われてしまう。
むしろ
「他人からいかに奪うか」「他人をどうやって出し抜くか」に専心するようになる。
資本市場というのは、人間が作り出したものである。
しかし今ではこれを制御できる人は誰もいない。
制御できないどころか、どのような振る舞いをするのかを予想することすらできず、多くの人が振り回されているのだ。
疎外とは
目的とシステムの間に想定された主従関係が逆転し、システムが主となって目的を従属化させるということである。
私たちは、何か問題があるとシステムを作って解決しようとする。
しかし
その作ったシステムは別の問題を生み出し、しかも元からあった問題は解決されないままになる。
企業活動における倫理的な側面での規律は、企業経営に携わる人々の倫理観や道徳観によって作られている。
この部分について、ほとんど考えることなく、ルールを与え、その順序状況から外側を監視することに膨大なエネルギーをかけても、問題は解決しない。
ルールやシステムで人の行動をコントロールしようとすれば、自ずと疎外は発生してしまう、
結局は、人間が作り出したシステムによって、作り出した人間が振り回されてしまう。