#283 人間の欲望は実現能力を上回るようにできている
人間は何でも望むことができるが、何一つ望み通りにはできないものである。
人間の欲望は、その実現能力を上回るようにできているので、常に現状に満足することはない。
そして争いや戦いを繰り返すことになる。
ローマの平民は護民官制度の創設という大きな利益を獲得しても満足せず、さらに貴族の持つ名誉や富の分け前を求める農地法制定の闘争を開始した。
それが300年にも渡る紛争を続け、共和国の破滅を招いてしまったのである。
人間という者は逆境に陥ると悩むが、万事順調にいっても退屈に苦しんでしまう。
また、必要に迫られなくても、野心に駆られて戦いに挑んでしまう。
野心というものは人の心の中を強く支配しているので、望みのままのどんな高い地位に上っても、これを捨て去ることはできないのである。