#282 組織のトップの役割とは 劉邦から考える

〜組織のトップの役割〜

 

①組織全体のコンセプトを明確にし、その組織の目的を誤りなく伝えること

 

劉邦の組織の目的は、戦争に勝つことである。究極的には天下を取ること。

 

そのためには、生命を賭け、恥にも耐えた。

 

項羽との休戦協定を破って東南に去る項羽軍を奇襲して、分割統治などでは満足できない組織の目的を明確にした。

 

戦乱期においては、理想に浸るよりは現実的である方が有利なことを全組織に見せるのには、効果的であった。

 

戦乱が終わり覇権が確立すると、一転して秩序の形成者として振る舞い、以降400年に渡る漢王朝の基礎を確立した。

 

そして

 

漢王朝が機能組織であることを明確にして、昔の仲間達を次々と処刑した。機能を終えた者は容赦無く処分したのである。

 

同時に封建制よりも古代的絶対王政を目指すことを明らかにしたのである。

 

 

②基本方針の決定と伝達

 

劉邦は、漢王朝の基本方針を秩序ある安定性を求め、成長性を否定した。

 

この点において秦の始皇帝とは全く逆である。

 

 

③総合調整

 

数多くの部局が生まれると、各部局の長は自分の担当だけを優先して、全体の視野を欠く。

 

トップたる者は、常に事業目的と基本方針の擁護者として、全体の総合調整に当たらなければならない。

 

組織というものは、それを作った目的とできた組織が持つ目的とは異なるものである。

 

そのため

 

組織を作った目的、つまり全体から見た合目的性を貫徹するためには、基本方針を徹底すると同時に、常に総合調整が必要になってくる。

 

この総合調整業務を行うことがトップの仕事である!

 

ある時には1つの方面軍あるいは事業部・支店を抑制し、ある時には特定の方面軍や事業部・支店だけに能力の集中を行わねばならないこともある。

 

意欲を抑えることは、抵抗が強いのである。軍隊でいえば「士気論」である。

 

軍の士気が燃え上がっている時に作戦を注視して撤退すれば、部隊将兵の士気に関わってくる。

 

これが一度衰えば再興は不可能になってくる。

 

それを敢えて抑えなければならないのが総合調整の難しさである。

 

トップたる者は、時には個人的な人情を捨てて、忠実な部下に不利益を与えなければならないこともある。